31.米国FDAの照射食品の健全性評価の判断基準
概要
米国食品医薬品局(FDA)の照射食品の安全性評価の基準のポイントは・1kGy以下で照射した食品は、国民が摂取しても健康上の問題はない、・1kGyを超えて照射した食品でも食事に占める割合が0.01%以下であれば、国民が摂取しても健康上の問題はない、・1kGyを超えて照射した食品で食事に占める割合が0.01%を超える場合、遺伝的試験と亜慢性試験を行い、有害な結果が得られなければ、国民が摂取しても健康上問題はない、の3点である。
内容
1.上記の考えのもとになるのは、照射食品に関する委員会(BFIFC)の次のような見解である。
1)食品を1kGy照射した場合の全放射線分解生成物は約30ppm程度の収率と推定。
収率(m mol/s)=線量(krad)×G値×10ー3
ここで、G値の平均を1、食品成分の平均分子量を 300として
1kGyでの収率=30r/s食品
=30ppm
2)このうち、非照射食品には見出されない特異的放射線分解生成物(URP)は全放射線分解生成物の10%、即ち3ppm、更に、そのうち単一のURP濃度は1ppm以下と推定。
3)食品中で0.01%を超えないような少量の成分は、50kGyまで照射しても、上記の考え方を適用して、人間が摂取しても安全であると考える。
2.さらにBFIFCは、1kGy以下の線量で照射した食品についての従来の毒性試験方法は毒性学的に意味のある解答を与えるとは期待できないとしている。これは次のような理由に基づいている。
1)多量の非照射および照射食品の投与によって実験動物が栄養的に著しくアンバランスな状態を生じて潜在的な毒性がマスクされる。
2)照射食品中の有毒な放射線分解生成物の濃度が低い。
3)照射食品中の潜在的なURP濃度があまりに低く、従来の毒性学的試験方法では感度が十分ではない。
・上記3)を補足すると、米国では、食品の毒性審査に際しては、投与量とそれによる影響との間に相関関係を求め、その式から影響が十分に小さいレベルとなる投与量を算出することにより、毒性を評価する方法をとっている。2.の1)〜3)は、試験方法に欠陥があると指摘しているのではなく、相関関係が求められるほどの影響が検出されない、すなわち、従来の各種毒性評価に比べて、照射食品の影響は著しく小さいということを述べている。3.1kGyを超え、かつ食事に占める割合が0.01%を超えるもので遺伝的試験や亜慢性試験の結果、有害な結果がなかった場合は、国民が摂取しても健康上問題はないと判断する。一方、陽性の結果が得られた場合は、以下の試験を行う。
1)遺伝的試験で有害な結果がでれば長期的試験。
2)亜慢性試験で有害な結果がでれば哺乳動物を用いた3世代にわたる動物試験。
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