食品照射において困難の大きい問題の一つは、線量測定の問題である。線量測定方法そのものには、原理的に各種の物理的、化学的方法があって相互間の測定値が必ずしも一致しない。その上に食品照射の性質上、試料の形態、包装、線量率などは、照射対象や処理方法により制約を受けるので、常に望ましい線量測定方法が利用できるとは限らない。また大量の試料の照射を行なうときには、照射効果を均一化せしめるために、試料各部の吸収線量を正確に測定しなければならない。本実験においては、馬鈴薯をガンマ線で照射して各種線量測定方法の相互比較、試料内の実験の吸収線量の測定を行なった。
馬鈴薯
Co−60 4000Ci 線源より 50cm 及び 200cm の円周上試料台上10、15cm に線量計を並べ、その時の線量と、その前に馬鈴薯を切断し、厚さ5、10、20cm 層としたもの、水の筒を同じ厚さとしたもの及び、丸のまま2箇、4箇並べた場合の線量の変化を調べた。
a) ガラス線量計(東芝蛍光ガラス、ピース8×8×4.7mm及び
針1mmφ×6mm)
b) 鉄線量計(Fricke)
c) 電離槽型線量計(Victreen 社 Radcon)
ガラスは名大農学部設計改造による蛍光線量計及び東芝蛍光線量計に
よる蛍光光度測定と吸収光(400mμ)の光度測定を行なった。
まず、Radcon 線量計とFricke 鉄線量計を比較したところ良く一致するので、これで得られた線量を標準にして、ガラス線量計の信頼度、試料による線量吸収度を測った。
a. 東芝蛍光ガラスの蛍光光度と線量との関係は、名大農学部式で測定し
た場合、ピースでは放物線状となり、針では8000R付近まで直線を
示した。
また線源より50cm と200cm の所で照射したもので線量率
の差は認められなかった。
b. 同じガラスピース型のものを用い、400mμの吸光度と線量の関係
を求めた結果、1,000Rまで直線を示し、線量率の差もなく結果は
良く一致した。
c. 東芝ガラス線量計用測定器FGD−3型を用いて蛍光度と照射線量の
関係を調べたが、線量率による差異がみられ、またピース、針もそれぞ
れ 2000K、3000R付近までしか直線がえられず結果の振れが
かなり大きかった。
d. これらの結果から、最も信頼のおけるa,b式でのガラス線量計及び
Fricke 線量計を用いて馬鈴薯を前においた場合の低下を調べる
と(線量計600/hr)
馬鈴薯 切 片 厚さ 10cm で 65%
〃 〃 20cm で 47%
〃 そのまま 2 箇 で 60%
〃 〃 4 箇 で 35%
に線量が低下した。この低下率は同じ厚さの水の層に比べると、低下の
程度はやや少なかった[図1−(1)]。さらにバルク包装における試
料の分布状態をガラス線量計で検討した結果、照射処理に差し支えない
程度に均一であった。また、板、プラスティックフィルム、ダンボール
など包装材料の影響も線量測定の上で障害にならないことがわかった。