水産ねり製品は、ちくわ、かまぼこ類、あげかまぼこ、魚肉ハム、魚肉ソ−セ−ジなどの総称であって、魚肉をよくすりつぶしてから適宜に成形し、これを焙焼、蒸煮、湯煮、油爍などの方法で加熱したものである。原料に供される魚は極めて種類が多く、その数量は例年総漁獲量の1/5(200万トン)以上が利用されており、製品の生産量は水産加工食品のうちでは最大である。
水産ねり製品は周年生産され、全国的に流通し消費されている食品であるが、一般に腐敗しやすく貯蔵性に乏しい。
腐敗の発生は、微生物とくに細菌類の繁殖に起因するものであるから、これらを防止するには殺菌処理が必要となる。食品中の有害、有害細菌の殺滅には、高温加熱処理、殺菌剤処理、凍結処理などの方法があるが、水産ねり製品とくにかまぼこ類のような特有の弾力が品質の良否を決定する製品にあっては、このような殺菌方法は返って品質を低下させる場合があるので好ましくない。したがって、製品の性状を変化させることなく殺菌効果を得る方法として放射線照射処理を検討する価値がある。
以上によって、水産食品のうちの主要品目である水産ねり製品を照射対照品目に選んだ。
水産ねり製品にはいろいろなタイプがあるが、そのうち代表的な蒸し板かまぼこ、ケーシング詰かまぼこ(包装かまぼこ)及びあげかまぼこを実験材料とした。これらの一般的製造方法は次の通りである。
原料魚(鮮魚)
↓
調 理
↓
採 肉
↓
水さらし
冷凍すり身 ↓
↓ 脱 水
解 凍 ↓
│ 肉挽き
│ ↓
│ 擂 潰
└──────────→↓
調 味
│
┌───────────┼────────────┐
│ │ │
│ │ │
↓ ↓ ↓
成形(板付け) 肉詰め 成 形
↓ ↓ ↓
蒸 煮 湯 煮 油 爍
↓ ↓ ↓
冷 却 冷 却 冷 却
↓ │ ↓
包 装 │ 包 装
│ │ │
│ │ │
│ │ │
│ │ │
│ ↓ │
│ ┌──────────┐ │
│ │ケーシング詰かまぼこ│ │
↓ └──────────┘ ↓
┌───────┐ ┌──────┐
│蒸し板かまぼこ│ │あげかまぼこ│
└───────┘ └──────┘
水産ねり製品の原料魚には鮮魚、冷凍魚を使用するが、最近では冷凍すり身(スケトウダラ)を多用している。冷凍すり身はフローシートに示す擂潰までの工程を終えたすり肉に冷凍変性防止剤を加えて急速凍結したものである。
市販の蒸し板かまぼこ(小田原産およびいわき産)を供試した。厚さ1cmに輪切りにし、ポリエチレン袋に1片ずつ詰め、含気または脱気の状態で密閉したものに200krad〜1Mradの線量を照射した。照射は本所設置のコバルト60、γ線照射室で行った。この際の線源の強さは約1,100Ci、照射時の品温を0〜5℃とし、線量率100krad/hrの条件とした。
適正線量の判定は、照射直後の試料の色沢、弾力、臭気の事項について5段階評点法による官能検査によった。結果は表1に示すとおりである。
この表から分かるように400krad以上の線量ではわずかに照射臭を生じ、線量が増加するにつれてその臭気は強くなる。また、色沢および弾力は500krad以下の照射では非照射のかまぼことほとんど差異は認められなかった。このことから、かまぼこ類の風味、色沢、弾力等に変化を及ぼさない線量の限度は300krad付近までと考えられた。
[表1 照射直後のかまぼこの官能検査]
次に、実験室でつくった表2に示す組成の蒸し板かまぼこ(板のサイズ:160mm×53mm、製品のサイズ:長さ140mm、幅53mm、高さ24mm、175g)を用い、Scheffeの一対比較法によって官能検査を行った。非照射区、300krad,400kradおよび500kradの照射区の4区をつくり、それぞれを組合わせて12の試験区を設け、外観、臭い、味について15人のパネルにより検査(審査会パネル)を行った。結果は表3および図1のとおりであって300krad照射が適正線量であることを示している。
照 射 線 量 (krad) |
色 沢 |
弾 力 |
臭 気 |
|||
含 気 包 装 |
脱 気 包 装 |
含 気 包 装 |
脱 気 包 装 |
含 気 包 装 |
脱 気 包 装 |
|
200 |
非照射区と同じ (白 色) |
非照射区と同じ (白 色) |
非照射区と同じ |
非照射区と同じ |
な し |
な し |
300 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
400 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
? |
同 上 |
500 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
同 上 |
わずかに照射臭 |
わずかに照射臭 |
700 |
帯 黄 色 |
同 上 |
非照射区より硬い |
非照射区より硬い |
明らかな照射臭 |
明らかな照射臭 |
1,000 |
帯 黄 色 |
|
同 上 |
|
同 上 |
|
主原料および副原料 |
すり身に対する添加量 (%) |
無塩冷凍すり身* (スケトウダラ、SA級) 食 塩 バレイショデンプン 卵 白 砂 糖 グルタミン酸ナトリウム 5’−イノシン酸ナトリウム 5’−グアニル酸ナトリウム み り ん |
2.7 5.0 8.0 1.0 1.0 0.025 0.025 2.0 |
* 砂糖4.0%、ソルビット4.0%、重合りん酸塩0.2% 製法:冷凍すり身 − 細断 − 解凍(0℃) − 擂潰 − 副原料添加 − すり身 − 成型 − 加熱 (80〜85℃、40分) − 水冷(撒水5秒) − 放冷(室温、60分) − 包装 − 密封 − 製品 |
外 観 |
評 点 |
計 |
||||||
+3 |
+2 |
+1 |
0 |
−1 |
−2 |
−3 |
||
A B B A |
|
2 |
11 |
1 2 |
10 |
4 |
|
−18 15 |
A C C A |
|
3 |
8 |
1 4 |
4 |
9 |
1 |
−25 14 |
A D D A |
|
11 |
2 3 |
1 1 |
8 |
4 |
|
−14 25 |
B C C B |
|
1 |
1 10 |
7 3 |
7 1 |
|
|
− 6 11 |
B D D B |
|
|
3 10 |
7 3 |
5 1 |
1 |
|
− 2 7 |
C D D C |
|
|
2 3 |
11 10 |
2 2 |
|
|
0 1 |
臭 気 |
評 点 |
計 |
||||||
+3 |
+2 |
+1 |
0 |
−1 |
−2 |
−3 |
||
A B B A |
|
3 |
4 6 |
1 1 |
7 6 |
2 |
|
3 −4 |
A C C A |
|
1 2 |
4 3 |
3 1 |
6 6 |
1 3 |
|
−2 −5 |
A D D A |
1 |
1 1 |
5 4 |
2 4 |
5 4 |
1 2 |
|
3 −2 |
B C C B |
|
|
4 4 |
8 7 |
3 4 |
|
|
1 0 |
B D D B |
|
2 |
5 3 |
7 5 |
1 6 |
|
|
8 −3 |
C D D C |
|
1 |
2 6 |
8 7 |
3 2 |
1 |
|
−1 4 |
味 |
評 点 |
計 |
||||||
+3 |
+2 |
+1 |
0 |
−1 |
−2 |
−3 |
||
A B B A |
|
2 |
7 7 |
1 3 |
5 4 |
|
1 |
6 0 |
A C C A |
|
2 1 |
6 6 |
1 1 |
5 6 |
1 1 |
|
3 0 |
A D D A |
1 |
1 |
7 5 |
2 3 |
4 6 |
1 |
|
8 −3 |
B C C B |
|
|
5 1 |
2 7 |
6 7 |
|
|
−3 −6 |
B D D B |
|
|
8 2 |
5 6 |
2 6 |
1 |
|
6 −6 |
C D D C |
|
1 |
6 4 |
5 9 |
4 1 |
|
|
2 5 |
推 定 値 |
|
A (0krad) |
B (300krad) |
C (400krad) |
D (500krad) |
外 観 臭 気 味 |
−0.925 0.141 0.167 |
0.058 0.066 0.063 |
0.458 −0.088 −0.058 |
0.408 −0.125 −0.192 |
300krad照射した蒸し板かまぼこの物性、つまりゼリー強度、凹みの大きさ、歯切れについて検討した。試料は表2に示した組成と同じであって、常法により製造したものである。照射直後および12〜15℃に1〜4週間保存中の物性値を表4に示した。
かまぼこ類はゼリー強度および凹みの大きさの数値が大きいほど、歯切れの数値は小さいほど良い品質とされているが、照射かまぼこのゼリー強度は非照射のものより大きく、かつ保存期間が長くなるとその差は一層顕著になった。このことは、γ線照射はかまぼこの物性を改良する効果があるということで注目される。
次に、かまぼこの色調に与える照射の影響を調べた結果を表5に示す。
物性試験に用いた試料の一部を色差計によってハンター白色度試験法で測定した結果であるが、照射によってかまぼこの表面および切断面のいずれも白色度が高くなっている。この結果は前記のパネルテストの結果と一致するところであって、この点もゼリー強度などの物性とともに照射の好ましい効果といえよう。
主原料および副原料 |
すり身に対する添加量 (%) |
無塩冷凍すり身* (スケトウダラ、SA級) 食 塩 バレイショデンプン 卵 白 砂 糖 グルタミン酸ナトリウム 5’−イノシン酸ナトリウム 5’−グアニル酸ナトリウム み り ん |
2.7 5.0 8.0 1.0 1.0 0.025 0.025 2.0 |
* 砂糖4.0%、ソルビット4.0%、重合りん酸塩0.2% 製法:冷凍すり身 − 細断 − 解凍(0℃) − 擂潰 − 副原料添加 − すり身 − 成型 − 加熱 (80〜85℃、40分) − 水冷(撒水5秒) − 放冷(室温、60分) − 包装 − 密封 − 製品 |
保存期間 |
ゼリー強度 *1 |
凹みの大きさ *2 |
歯 切 れ *3 |
|||
照 射 |
非照射 |
照 射 |
非照射 |
照 射 |
非照射 |
|
直 後 1 週 間 2 週 間 4 週 間 |
465g 470 660 743 |
450g 458 580 590 |
28mm 26 32 36 |
29mm 25 32 33 |
130゜ 125 115 116 |
130゜ 128 120 122 |
*1、*2、*3:岡田式ゼリー強度試験装置による。 *1:プランジャー(先端の直径5mm)を試験片に押し込み破断するまでの力(重量) *2:破断するまでの深さ *3:加重 − 変形曲線の角度 保存温度は12〜15℃ |
保存期間 |
表 面 *1 |
切 断 面 *2 |
||
照 射 |
非 照 射 |
照 射 |
非 照 射 |
|
直 後 1 週 間 2 週 間 4 週 間 |
44.4% 44.6 43.7 42.9 |
40.3% 38.3 41.6 39.3 |
44.3% 43.7 44.5 44.4 |
41.5% 41.3 43.6 42.6 |
*1、*2:色差計によるハンター白色度試験法 標準板の白色度78.0% 表中の数字は9個の試験片の平均値 保存温度は12〜15℃ |
300krad照射した実験室製蒸し板かまぼこ(保存料、殺菌剤無添加:表2)を12〜15℃で貯蔵すると、表6に示すように非照射かまぼこは1週間後には全数ネトやカビの発生がみられたが、照射かまぼこは2週間は全く異常なく、3週間後に一部にネトやカビの発生がみられた。
いっぽう、市販の小田原産、いわき産及び実験室製の蒸し板かまぼこを300kradで照射して、種々の温度で貯蔵したときの品質保持日数を比較したのが表7である。
この表から分かるように、1〜4℃の低温で貯蔵すると非照射のものでも3週間以上の貯蔵性があり、照射のものはそれより長い貯蔵性がある。10〜12℃で貯蔵したときには、照射小田原かまぼこでは12日、非照射が5〜7日、照射いわきかまぼこでは21日、非照射は10日であって、それぞれ約2倍の貯蔵期間の延長がみられ、照射の効果を認めた。しかし、20℃または25℃という比較的高い温度で貯蔵すると、照射かまぼこは非照射かまぼこにくらべ若干の日数延長がみられるが、いずれも6日以内であって、実用的には照射効果はあまり期待されるものではない。
以上の結果をまとめると、蒸し板かまぼこに対してのγ線照射の適正線量は300krad付近と判断され、この線量の照射かまぼこは10〜12℃という比較的低い温度で貯蔵するとおおむね3週間(非照射かまぼこの2倍)の品質保持が可能であることが分かった。また、300kradの照射によってかまぼこの弾力の増加や白色度の増大という好ましい品質改良効果も得られた。
次に、包装かまぼこ(ケーシング詰かまぼこ)について照射効果を検討した。このかまぼこは、調味したねり肉を気密性のあるプラスチックフィルム(円筒状)に充填し、密封したのち加熱するので、二次汚染を受けることは全くない。試料は表8に示す組成のかまぼこ(ケーシングの折り径 60mm、長さ 140mm、重量 170g、80℃で40分間加熱)を自製し、包装のまま300kradで照射したときの効果を検討した。
結果は表9および表10に示すようにゼリー強度および白色度の増加がみられ、10℃貯蔵で100日(非照射は35日以内)、30℃貯蔵で3日(非照射は1日)の貯蔵に耐えた。
これらの結果から、蒸し板かまぼこの場合と同様にγ線照射が有効であることを確認した。
次に、蒸し板かまぼこや包装かまぼことは加熱方法や組成が異なる製品としてあげかまぼこについて研究を追加した。
かまぼこ製造工場で製造直後の市販用あげかまぼこ(組成は表11に示す)を一枚ずつプラスチックフィルム(ポリアミド/ポリエチレン:25/60μ)の袋(10×15cm)に詰め、大気中でヒートシールした含気包装と真空包装したものにそれぞれ300kradの線量を照射した。照射は1.7×10・E(4)rad/hr,品温を0〜2℃の条件で行った。
照射ののち、9〜11℃および28〜30℃で貯蔵したときの品質保持日数を調べ、その結果を図2に示した。図から分かるように、9〜11℃で貯蔵すると真空包装の照射あげかまぼこは42日(非照射は14日)の貯蔵に耐え、含気包装では照射あげかまぼこが25日(非照射は10日)であって、明らかに貯蔵性は延長し、とくに、真空包装と照射との併用が優れた貯蔵性延長効果を示した。いっぽう、28〜30℃の高温での貯蔵は、真空包装と照射の併用でも4日程度のもので、実用的にはほとんど効果あるとはいえないであろう。
あげかまぼこは、成形したすり肉を植物油(ナタネ油)の中で揚げたものであるから、製品に吸収された油に対する照射の影響をTBA値の測定によって調べ、その結果を表12に示した。
これによると、含気包装、真空包装いずれも照射あげかまぼこが非照射対照よりTBA値が高くなっており、かつ9〜11℃に貯蔵中に次第に増加する傾向がみられている。したがって、照射によって油脂の酸化が促進されることを示しているが、この程度の増加は官能的に判別できず、実用上は問題ないと考える。
以上のように蒸し板かまぼこ、包装かまぼこ、およびあげかまぼこについての研究結果から、水産ねり製品に対してのγ線照射の適性所要線量は300kradと考えられ、照射後10℃付近で貯蔵すれば明らかに貯蔵性が向上することが分かった。
主原料および副原料 |
すり身に対する添加量 (%) |
無塩冷凍すり身* (スケトウダラ、SA級) 食 塩 バレイショデンプン 卵 白 砂 糖 グルタミン酸ナトリウム 5’−イノシン酸ナトリウム 5’−グアニル酸ナトリウム み り ん |
2.7 5.0 8.0 1.0 1.0 0.025 0.025 2.0 |
* 砂糖4.0%、ソルビット4.0%、重合りん酸塩0.2% 製法:冷凍すり身 − 細断 − 解凍(0℃) − 擂潰 − 副原料添加 − すり身 − 成型 − 加熱 (80〜85℃、40分) − 水冷(撒水5秒) − 放冷(室温、60分) − 包装 − 密封 − 製品 |
処理区 |
線 量 |
保 存 期 間 (週) |
||||
保存直前 |
1 |
2 |
3 |
4 |
||
照 射 |
300 krad |
異常なし (0/10)* |
異常なし (0/10) |
異常なし (0/10) |
ネト点在、カビ点 在のものもあり (3/10) |
部分的にネト、カ ビ発生 (6/10) |
非照射 |
− |
異常なし (0/10) |
ネト点在、カビ 併発のものもあり (0/10) |
板の部分に カビ発生 (10/10) |
ネト、カビ全面に 発生 (10/10) |
全面ネト、カビで 覆われる (10/10) |
保存温度12〜15℃ ネト、カビ発生試料数/全試料数 |
照 射 材 料 |
保存温度 (℃) |
品質保持日数 |
包 装 材 料 |
||
産 地 |
記 号 |
照 射 |
非 照 射 |
||
小田原 |
A B C A B |
1 〜 4 1 〜 4 10 〜 12 25 25 |
>25 30 12 5 3 |
21 〜 25 25 5 〜 7 2 2 |
セロファン/ポリエチレン ポリエチレン 防湿セロファン セロファン/ポリエチレン ポリエチレン |
いわき |
A*1 B*2 C*1 |
1 〜 4 10 〜 12 20 |
>21 21 4〜6 |
>21 10 2 |
防湿セロファン 防湿セロファン ポリエチレン |
実験室製*3 |
|
20 |
3 |
2 |
防湿セロファン |
*1 合成保存料、合成殺菌料使用の表示あり *2 過酸化水素、漂白剤無使用の表示あり *3 合成保存料、合成殺菌料無添加 |
主原料 および 副原料 |
すり身に対する添加量(%) |
スケトウダラ冷凍すり身(SA級)* 食 塩 バレイショでん粉 グルタミン酸ナトリウム 5’−イノシン酸ナトリウム 5’−グアニル酸ナトリウム 砂 糖 み り ん |
2.8 5.0 1.0 0.0025 0.0025 1.0 4.0 |
*砂糖4%、重合りん酸塩0.2%添加 製法:冷凍すり身 → 解凍 → 細断 → 擂潰 → 塩ずり → 副原料添加 → 擂潰 → ケーシング詰 → 包装 → 加熱(85℃、40分間) → 冷却 → 製品 |
区 分 |
品 質 |
貯 蔵 日 数 10℃ |
||||||
製造直後 |
14 日 |
28 日 |
42 日 |
|||||
3 0 照 0 k 射 r a d 品 |
弾 力 1) ゼリー強度 2) 凹みの大きさ 3) 歯 切 れ 4) ハンター白色度 5) |
7.5 460 36 130 55.4 |
7.5 480 38 130 54.0 |
7.5 490 39 130 54.6 |
7.5 490 39 130 54.2 |
|||
一般生菌数 6) 酸 度 7) |
<30 0.32 |
<30 0.38 |
<30 0.43 |
<30 0.45 |
||||
食 用 可 否 |
可 |
可 |
可 |
可 |
||||
非 照 射 品 |
弾 力 ゼリー強度 凹みの大きさ 歯 切 れ ハンター白色度 |
7.3 420 36 130 51.6 |
7.3 440 37 130 52.0 |
7.3 440 37 130 51.2 |
6.8 400 30 135 50.3 |
|||
一般生菌数 酸 度 |
<30 0.32 |
5.7×10・E(2) 0.43 |
5.0×10・E(4) 0.47 |
1.1×10・E(5) − |
||||
食 用 可 否 |
可 |
可 |
可 |
否 |
||||
69 日 |
83 日 |
103 日 |
||||||
7.5 480 39 130 53.2 |
7.5 480 39 130 53.0 |
7.5 450 36 135 52.8 |
||||||
<30 − |
<30 − |
<30 − |
||||||
可 |
可 |
可 |
||||||
6.8 400 30 135 48.0 |
6.8 400 28 135 48.1 |
6.5 330 28 135 47.2 |
||||||
3.1×10・E(5) 0.58 |
4.5×10・E(5) − |
1.3×10・E(3) − |
||||||
否 |
否 |
否 |
註 1)官能検査10点法 2)〜4) 西田式ゼリー強度試験装置による 5)色差計による 6) 試料1g中 7)材料5ml(かまぼこ5g + 水 45mlの抽出液)に対するN/100 NaOH の滴定ml数 |
区 分 |
品 質 |
貯 蔵 日 数 30℃ |
||||||
製造直後 |
1 日 |
2 日 |
3 日 |
|||||
3 0 照 0 k 射 r a d 品 |
弾 力 ゼリー強度 凹みの大きさ 歯 切 れ ハンター白色度 |
7.5 490 37 130 53.1 |
7.5 480 40 133 51.5 |
7.5 470 37 132 51.8 |
7.5 420 35 134 52.0 |
|||
一般生菌数 酸 度 |
<30 0.32 |
<30 0.40 |
2.6×10・E(3) − |
3.5×10・E(3) 0.48 |
||||
食 用 可 否 |
可 |
可 |
可 |
可 |
||||
非 照 射 品 |
弾 力 ゼリー強度 凹みの大きさ 歯 切 れ ハンター白色度 |
7.3 460 35 130 48.5 |
7.3 450 37 135 50.2 |
7.3 410 32 135 51.0 |
|
|||
一般生菌数 酸 度 |
<30 0.32 |
1.6×10・E(3) 0.53 |
3.6×10・E(5) 0.64 |
1.2×10・E(7) 1.00 |
||||
食 用 可 否 |
可 |
可 |
否 |
否 |
||||
4 日 |
5 日 |
6 日 |
||||||
|
|
|
||||||
− |
3.1×10・E(4) − |
4.2×10・E(5) 0.56 |
||||||
? |
否 |
否 |
||||||
|
|
|
||||||
1.42 |
|
|
||||||
否 |
|
|
組 成 |
数 量 |
比 率 |
スケトウダラ冷凍すり身(SA級) 生 す り 身 野 菜 食 塩 バレイショ で ん 粉 グルタミン酸ナトリウム 砂 糖 |
80 kg 70 10 4 12.8 1.6 9.6 |
100 % 〃 〃 2.5 8.0 1.0 6.0 |
計 |
188.0 |
|
品 質 |
実験区分 |
貯 蔵 日 数 貯 蔵 日 数 |
|||||||||||||
0 |
1 |
3 |
4 |
6 |
7 |
8 |
10 |
13 |
14 |
24 |
31 |
42 |
68 |
||
TBA* |
AC30 AR30 VC30 VR30 AC10 AR10 VC10 VR10 |
17.8 18.0 |
17.4 19.0 17.3 19.2 |
18.7 20.0 20.2 |
17.5 |
17.8 16.7 |
17.7 17.0 |
17.3 |
17.4 |
17.2 |
18.1 18.1 |
18.7 |
20.7 |
18.2 |
|
*O.D535 × 100 28〜30℃保存区 略号 含気包装 − 非照射区 AC30 含気包装 − 300krad照射区 AR30 脱気包装 − 非照射区 VC30 脱気包装 − 300krad照射区 VR30 9〜11℃保存区 含気包装 − 非照射区 AC10 含気包装 − 300krad照射区 AR10 脱気包装 − 非照射区 VC10 脱気包装 − 300krad照射区 VR10 |
実験室製の蒸し板かまぼこ(表2)に100、300および500kradを照射し、それぞれを15℃の恒温器中に保管し、経日的に微生物の試験を行った。この温度に保管したとき、一般生菌数の変化は図3に示すようであって、官能的に初期腐敗が始まったと判定されたのは非照射区で4日後、100krad照射区は6日後、300krad照射区は23日後、500krad照射区は34日後であった。そして、それぞれの初期腐敗に該当する時期の試料の表面および内部から分離した細菌類について分類を行った結果を表13に示した。さらに、分離菌のGenusレベルまで同定した結果を表14に示した。 これらの結果から、非照射蒸し板かまぼこから分離されたのはPseudomonas,Flavobacterium,Corynebacterium,Lactobacillus,Bacillus,Micrococcus および Staphylococcus に属する細菌であり、100krad照射のものの菌叢も非照射とほとんど同じであったが、300krad照射のものでは Corynebacterium および Bacillus が、500krad照射のものからは、Bacillus だけが分離された。
次に、包装かまぼこ(表8)を300kradで照射後、10℃および30℃で保管し、それぞれの初期腐敗時の菌叢について Genus レベルまでの同定を行った結果を表15に示した。
非照射包装かまぼこは10℃保管で35日、30℃保管では2日でそれぞれ腐敗が始まったが、これらの試料から Lactobacillus,Bacillus および Corynebacterium が分離された。いっぽう、照射包装かまぼこにおいては、10℃保管で103日経過して、30℃保管では3日後にそれぞれ初期腐敗に達したが、前者からは Bacillus だけが検出され、後者からは Bacillus および Corynebacterium が検出された。
以上の結果から、蒸し板かまぼこあるいは包装かまぼこを、300krad程度のいわゆる低線量照射すると、無芽胞細菌のほとんどは死滅するが、Bacillus のような芽胞形成菌は照射後も生残することが分かった。
いっぽう、含気包装または真空包装の照射あげかまぼこについて、9〜11℃および28〜30℃で保管したときの腐敗開始時の菌叢について調べた。その結果は表16に示したが、その構成菌はすべて Bacillus であった。
このBacillus は菌形、鞭毛の数、鞭毛の着生位置などの形態学的観察から7種類(I〜VII)に分類されたが、これらのうち半数の種類は照射線量が300kradで死滅するが、他の種類は照射に耐えて生残することが分かった。
あげかまぼこは成形したすり肉(厚さ約1cm)を180〜200℃の高温の油中で揚げるので、すり肉中の細菌類は死滅すると考えられたが、必ずしもそうではなく、加熱後の製品中に Bacillus が生残している。これは、表面に焦げ目がつく程度の加熱処理に止めるので、加熱時間が短く、すり肉の中心部がこの細菌を死滅させるまでの温度に上昇していないためと考えられる。
いずれにしても、300krad照射した水産ねり製品には、その種類を問わず Bacillus が生残するので、これが腐敗原因となる。しかし、照射製品を10℃前後の温度に保管すると腐敗開始時期が顕著に遅延する。それは、Bacillus が中温性に属する細菌なので、低温下では繁殖速度が極めて緩慢になるからである。つまり、照射製品の腐敗原因である Bacillus の繁殖が低温によって抑制されるためである。したがって、照射水産ねり製品は低温保管と併用してはじめて貯蔵性の延長効果が得られることになる。
主原料および副原料 |
すり身に対する添加量 (%) |
無塩冷凍すり身* (スケトウダラ、SA級) 食 塩 バレイショデンプン 卵 白 砂 糖 グルタミン酸ナトリウム 5’−イノシン酸ナトリウム 5’−グアニル酸ナトリウム み り ん |
2.7 5.0 8.0 1.0 1.0 0.025 0.025 2.0 |
* 砂糖4.0%、ソルビット4.0%、重合りん酸塩0.2% 製法:冷凍すり身 − 細断 − 解凍(0℃) − 擂潰 − 副原料添加 − すり身 − 成型 − 加熱 (80〜85℃、40分) − 水冷(撒水5秒) − 放冷(室温、60分) − 包装 − 密封 − 製品 |
分 離 菌 |
0 krad |
100krad |
300krad |
500krad |
表面 内部 |
表面 内部 |
表面 内部 |
表面 内部 |
|
グラム陰性、無芽胞かん菌 グラム陽性、無芽胞かん菌 芽胞形成かん菌 グラム陽性球菌 |
19 8 4 17 0 8 14 0 |
20 0 0 19 1 18 14 0 |
0 0 15 21 6 47 0 0 |
0 0 0 0 17 34 0 0 |
分 離 菌 数 計 |
37 33 |
35 37 |
21 68 |
17 34 |
* 無照射は4日、100kradは6日、300kradは23日、500kradは34日間15℃に保存後菌の分離を行った。 |
分 離 菌 の 属 名 |
0 krad |
100 krad |
300 krad |
||
表面 内部 |
表面 内部 |
表面 内部 |
|||
Pseudomonas Flavobacterium− Cytophaga Corynebacterium− Microbacterium− Pseudobacteirum Lactobacillus Bacillus Micrococcus Staphylococcus |
19 4 (51.3) (12.3) 4 (12.2) 4 9 (10.2) (27.2) 8 (24.2) 8 (24.2) 6 (16.2) 8 (21.6) |
18 (42.8) 5 (14.2) 18 (48.6) 1 (2.7) 6 18 (2.8) (48.6) 14 (40.0) |
15 21 (71.4) (30.8) 6 47 (28.5) (69.1) |
||
合 計 |
37 33 (100) (100) |
35 37 (100) (100) |
21 68 (100) (100) |
||
分 離 菌 の 属 名 |
|
500 krad |
|||
|
表面 内部 |
||||
Pseudomonas Flavobacterium− Cytophaga Corynebacterium− Microbacterium− Pseudobacteirum Lactobacillus Bacillus Micrococcus Staphylococcus |
|
17 34 (100) (100) |
|||
合 計 |
|
17 34 (100) (100) |
*材料は表13のものと同じ、( )内の数値は% |
主原料 および 副原料 |
すり身に対する添加量(%) |
スケトウダラ冷凍すり身(SA級)* 食 塩 バレイショでん粉 グルタミン酸ナトリウム 5’−イノシン酸ナトリウム 5’−グアニル酸ナトリウム 砂 糖 み り ん |
2.8 5.0 1.0 0.0025 0.0025 1.0 4.0 |
*砂糖4%、重合りん酸塩0.2%添加 製法:冷凍すり身 → 解凍 → 細断 → 擂潰 → 塩ずり → 副原料添加 → 擂潰 → ケーシング詰 → 包装 → 加熱(85℃、40分間) → 冷却 → 製品 |
分 離 菌 の 属 名 |
300 krad 照 射 区 |
非 照 射 区 |
合計 |
||||
2) 0日 |
30℃ 1) (3日)2) |
10℃ 1) (103日) 2) |
2) 0 日 |
30℃ 1) (2日)2) |
10℃ 1) (35日) 2) |
|
|
Bacillus |
1 1 |
6 |
6 |
2 |
2 6 2 |
1 2 |
13 6 5 |
2 (100) |
6 (20.0) |
6 (100) |
2 (33.3) |
10 (47.6) |
3 (7.8) |
|
|
Corynebacterium |
|
24 |
|
1 |
1 |
8 4 |
33 5 |
0 |
24 (80.0) |
0 |
1 (16.6) |
1 (4.7) |
12 (31.5) |
|
|
Lactobacillus |
|
|
|
2 1 |
8 2 |
13 5 5 |
23 8 5 |
0 |
0 |
0 |
3 (50.0) |
10 (47.6) |
23 (60.5) |
|
|
合 計 (%) |
2 (100) |
30 (100) |
6 (100) |
6 (100) |
21 (100) |
38 (100) |
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1):保存温度 2):菌を分離するまでの製品の保存日数 |
照射(300krad)および非照射あげかまぼこから分離された Bacillus 属の出現度数分布(菌株数) |
Bacillus の種類 |
処 理 区 分 ( 保 存 日 数 )* |
計 |
||||||||
対 照 0 |
AC30 2 |
AR30 2 |
VC30 3 |
VR30 4 |
AC10 13− |
AR10 25 |
VC10 13 |
VR10 69 |
||
I 群 II III IV V VI VII |
5 10 |
6 9 |
10 |
9 5 3 |
10 4 2 |
2 9 1 5 3 |
1 17 |
4 7 5 2 5 5 |
1 16 13 |
36 56 11 40 8 5 13 |
計 |
15 |
15 |
10 |
17 |
16 |
20 |
18 |
28 |
30 |
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*処理区分 9〜11℃保存区 略記 含気包装 − 非照射区 AC10 含気包装 − 300krad照射区 AR10 脱気包装 − 非照射区 VC10 脱気包装 − 300krad照射区 VR10 28〜30℃保存区 含気包装 − 非照射区 AC30 含気包装 − 300krad照射区 AR30 脱気包装 − 非照射区 VC30 脱気包装 − 300krad照射区 VR30 |
水産ねり製品は、わが国で実施された食品照射研究における照射対照食品に指定された品目のうちの一つであって、低線量による貯蔵期間の延長を目的としたものである。
本研究では、コバルト60、ガンマ線による照射効果について行った。試料として蒸し板かまぼこ、包装かまぼこ及びあげかまぼこを用いて検討した結果、いずれの試料においても貯蔵期間の延長が認められたことから、水産ねり製品に対して照射効果のあることを明らかにした。 また、照射効果に関する研究は、国立大学等の協力(日本アイソトープ協会委託研究)により蒸し板かまぼこおよび包装かまぼこの品質、成分あるいは添加物に対する放射線照射の影響、微生物学的検討など基礎的ならびに実用的研究が行われたが、実用線量と見込まれる300krad照射においては問題となるところはほとんどないことが証明されている。
照射製品の品質を微生物学的にみると、ほとんどの場合 Bacillusに属する細菌が検出されている。この菌は主として副原料として使用されるでんぷんに細菌が検出されている。この菌は主として副原料として使用するでんぷんに由来するものである。Bacillusの芽胞は耐熱性を有するので通常の加熱条件(一般製品は中心部の温度が75℃、包装かまぼこは80℃、20分間;食品衛生法による製造基準)では死滅しないで製品中に残存する。しかも、加熱後の照射(300krad)にも耐えて生残する。しかし、生残する Bacillus は10℃以下の低温では繁殖が顕著に遅延するので、照射製品の貯蔵期間延長のためには低温貯蔵が絶対必要条件となる。その温度は実験結果からみて10℃程度が適当である。
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