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照射効果(IRRADIATION EFFECT):食品に放射線を照射した場合の貯蔵、衛生化等の効果

殺菌・腐敗抑制(水産ねり製品)


発表場所 : 食品照射 第19巻,p.33 (1984)
著者名 : 奥 忠武
著者所属機関名 : 日本大学農獣医学部
発行年月日 : 1984年
包装状態を異にするγ線照射揚げかまぼこの成分変化 第U報 照射および貯蔵による油脂の変化

実験方法
実験結果および考察



包装状態を異にするγ線照射揚げかまぼこの成分変化 第U報 照射および貯蔵による油脂の変化


包装状態を異にするγ線照射揚げかまぼこの成分変化 第U報 照射および貯蔵による油脂の変化

前報では包装状態を異にする条件−含気包装、脱気包装および窒素置換包装の揚げかまぼこの照射ならびに貯蔵によるアミノ酸含量の変化について検討した。

揚げかまぼこの貯蔵中の油脂の酸化は、包装状態によりかなり支配されるものと考えられるが、それらに関しては含気包装の場合の報告1,2)がある程度のようである。

本報告では、前報と同一試料について、照射ならびに貯蔵を行った場合の油脂の変化を脂肪酸組成および油脂の諸特性を調べ検討した。

実験方法

試料の原料組成(主原料はスケトウダラ冷凍すり身)、揚げ方(120±5℃で1.5分、次に170±5℃で1.5分の2段揚げ)、包装状態(含気、脱気(45mmHg)、窒素置換下で揚げかまぼこを1個ずつK−セロファン袋に封入)、照射条件(コバルト−60ガンマ線照射装置を用い3kGyの照射)および貯蔵条件(30℃およびIO℃)は前報と同じである。

油脂の抽出: 油脂はクロロホルム・メタノール( 2:1v/v )混液を用いるFolch らの方法3)で3回抽出し、この半分は諸特性の測定用に、残りの半分は脂肪酸分析用とした。抽出操作は5℃の低温室で行った。

油脂の諸特性の測定: IV、Av、POV の測定は基準油脂分析法4)に従い、チオバルビツール酸値(TBA値)はSinnhuberの方法5)に準じた。

脂肪酸のエステル化: 三フツ化ホウ素・メタノール溶液を用いる方法6)でエステル化した。

ガスクロマトクラフイーの分析条件: カラムは3mmΦx3mに5%SinchromeE71/shimalite AW(80〜100 mesh)を充填し、カラムオーブン240℃(アイソサーマル)、インジェクシヨンポート260℃ 、検出器300℃ 、ガス流量はN2 60ml/min 、H2 、0.8kg.cm2、空気1.0kg.cm2、検出器はFIDである。

脂肪酸の定量: n−オクタデカンを内部標準物質とする豊水らの方法7)により各脂肪酸のメテルエステルとn−オクタデカンとの検量線を作成し、定量は抽出油脂のエステル化物にn−オクタデカンを添加、分析した結果(ピークの面積を半値巾法で算出)を検量線と比較して行った。

実験結果および考察

照射前後

照射前および直後の試料から抽出した油脂の脂肪酸を分析した結果はTable 1 に示した。この結果は3包装状態とも共通である。

照射前後ともC14:0〜C22:1酸までの10種の脂肪酸が確認され、量的には C16:0、18:1と18:2酸が多く、全脂肪酸の9割近くをしめた。照射による脂肪酸の増減はほぼ認められなかった。Howtonら8)はC18:0酸(ステアリン酸)に100〜450Mradの高線量の照射を行い、GC分析をした結果、脱炭酸:C-Cの開裂や二量体の生成が相当あると報告しているが、本報では3kGyの低線量であることと混合系であるので、この様なことはほぼ生じていないものと推察される。

また、抽出油脂の諸特性は、AV、TBA、POVはほぼ変化がないか僅かに増加した程度で、IVは逆に僅小の減少を示した。

これらのことから、揚げかまぼこの3kGy照射による油脂の変化は、前報1,2)と同様にほぼないものと思われる。

30℃貯蔵

揚げかまぼこ油脂の脂肪酸の経日変化はFig.1にまたIVの変化はFig.2にそれぞれ示した。

30℃貯蔵区では、含量の高いC16:0および18:0酸の変化はほぼないが、不飽和酸の変化は、C18:3および 8:2酸で経日的に減少がみられ、C18:1や22:1酸の減少はそれらよりややゆるやかであった。減少を飽和酸および不飽和酸の合計でみると、不飽和酸が早く、飽和酸は緩慢であった。IVの変化も上記不飽和酸の結果と類似し、減少は大であった。また、図示していないが、AV、POV、TBAも急激な増加がみられた。

以上のことから、30℃貯蔵の場合は包装状態や照射、非照射間で大差なく油脂の酸化の進行が急激であることが判った。また、前報の通り総菌数の増加もいずれの試科においても急激であり、1週間以内での腐敗が明らかであった。

1O℃貯蔵

1O℃貯蔵を行った揚げかまぼこ油脂のIVを測定した結果はFig.2に示した通り僅かの減少であった。脂肪酸の変化は図示していないが、30℃に比べて少く、各脂肪酸の減少はゆるやかであった。また、AV、POV、TBAの増加も僅小であった。

油脂の酸化の度合を脂肪酸量の減少および諸特性で比較すると、含気包装が幾分早く、次いで脱気、窒素置換包装の順であった。しかし、照射および非照時間の差は明確でなかった。

10℃貯蔵の総菌数の変化は前報に記した通り、3種の包装状態では含気包装で非照射、次いで照射が早い増加を示した。脱気包装と窒素置換包装の総菌数の増加に大差はないが、いずれの包装も非照射が2週以降に急増傾向を示したのに対し、照射試料では僅かの増加しか認められなかった。

終りに、本研究の遂行に終始ご指導を戴いた白井和雄教授に深謝致します。

γ線照射装置の使用の便をはかって戴いた農林水産省東海区水産研究所の篠山茂行および戸沢晴己の両技官に対し感謝致します。

本研究の費用の一部は昭和58年度日本大学農獣医学部教育研究助成金(個人研究)によるものです。

記して謝意を表します。

文献

1)奥 忠武:日食工誌, 30, 350 (1983).

2)奥 忠武:日食工誌, 31, 174 (1984).

3)Folch,J., Ascolt,I., Lees,M., Meath,J.A. and Lebaron,F.N.: J. Biol. Chem., 191, 833 (1951).

4)日本油化学協会編:基準油脂分析試験法(朝倉書店) (1972).

5)Sinnhuber,R.0. and Yu,T.C.: 油化学, 26, 256 (1977).

6)Metcalfe,L.D., Schumitz,A.A. and Pelka,J.R.:Anal. Chem., 38, 514 (1966).

7)庄野嘉彦・豊水正道:日水誌, 37, 912 (1971).

8)Wu,G.‐S. and Hawton,D.R.:Rad. Res., 61, 374 (1975).

(昭和59年5月31日受理)


Table 1 Fatty acid composition of the oil in fried Kamaboko before and after irradiation (mg/g of oil extracted)
Futty
acid


Unirradiated
Irradiated (3 kGy)
Mean
value
Experimental
error*(%)
Mean
value
Experimental
error(%)
C14:0
C16:0
C16:1
C18:0
C18:1
C18:2
C18:3
C20:0
C20:1
C22:1
3
120
tr.**
39
245
489
75
tr.
4
9
4.5
0.6
-
0.4
0.5
0.3
0.7
- 
3.5
4.8
3
120
tr.
39
244
487
73
tr.
3
8
4.3
0.5
-
0.3
0.4
0.4
0.5
  -
4.3
5.1
Saturates
Unsaturates
162
822
1.8
2.0
162
817
1.7
2.1

*Experimemtal error(%) = (difference/mean value) x 100
**Trace:less than 1 mg



Flg.1 Changes in the fatty acid content of the oil in fried Kamaboko packed under various atmosphere during storage at 30℃. ─,Irradiated; ---,Unirradiated. Irradiated with a dose of 3 kGy.



Fig.2 Changes in iodine value (IV) of the oil in fried Kamaboko packed under various atmosphere during storage. Storage at 30℃(△) and 10℃(▲). ─,Irradiated; --- ,Unirradiated. Irradiated with a dose 3 kGy.





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