わが国では1974年から馬鈴薯の照射が実用化されており、60〜150Gy照射した馬鈴薯が端境期に市場に出されている。しかし、照射馬鈴薯を受け入れない消費者もおり、照射馬鈴薯を識別する技術、すなわち検知技術の開発に対する要望は強い。また、照射馬鈴薯の検知技術は再照射の防止など照射の管理の見地からも重要である。そこで、インピーダンス測定による照射馬鈴薯の検知技術を確立するとともに、異なった品種の馬鈴薯および士幌産の照射馬鈴薯に対する本方法の有用性について検討し、以下の結果を得た。
1)馬鈴薯の電気インピーダンスの5kHzと50kHzにおける比(Z5k/Z50k)は、電極の影響を受けず、照射馬鈴薯と非照射馬鈴薯をうまく識別することができた。すなわち、馬鈴薯に挿入できる電極であれば、いかなる大きさや形状の電極でも使用可能である。
2)照射馬鈴薯の検知の成否は測定温度や馬鈴薯における測定部位の影響を受けた。馬鈴薯の先端部に電極を挿入してインピーダンスを測定した時に照射馬鈴薯と非照射馬鈴薯の違いが最も大きかった(Fig.1)。また、インピーダンスを測定する前の馬鈴薯の貯蔵条件が照射馬鈴薯の検知の成否に大きな影響を及ぼした。
馬鈴薯を22℃で3日以上貯蔵してから22℃で先端部のインピーダンスを測定して求めた Z5k/Z50kが照射馬鈴薯の検知のパラメータとして最も優れており(Fig.2,3)、この値は線量に依存して増加した(Fig.4)。
3)男爵および出島の2品種について検討したところ、Z5k/Z50kの値は非照射試料、照射試料とも産地の影響をあまり受けなかった(Figs.5,6)。
4)多品種の馬鈴薯について検討したところ、いずれにおいても非照射の試料と100Gy照射した試料を識別することができた(Fig.7)。Z5k/Z50kは、同一品種であれば産地の影響はあまり受けなかったが、品種が異なると異なった値を示した。これらの結果から、品種が既知の馬鈴薯については照射処理の検出が可能であることが明らかになった。
5)本方法により、士幌で商業的に照射された馬鈴薯(男爵)と非照射の馬鈴薯(男爵)とを識別することも可能であった(Fig.8)。
文 献
1)Hayashi,T.et al.,Agric,Biol.chem., 46, 905 (1982)
2)Hayashi,T.et al.,J.Jpn.Soc Food Sci., Technol., 30, 51 (1983)
3)Hayashi,T.et al.,Biosci.Biotechnol.Biochem., 56 (1992)
4)Hayashi,T.et al.,J.Jpn.Soc.Food Sci., Technol., 40, 378 (1983)
●,0 Gy: ○,100Gy. A,Apical: B,Central: C,Side: D,Basal. A-0,impedance ratio at apical region 1 week after irradiation; A-6,impedance ratio at apical region 6 months after irradiation; B-0,impedance ratio at central region 1 week after irradiation; B-6,impedance ratio 6 months after irradiation; C-0,impedance ratio at side region 1 week after irradiation; C-6,impedance ratio at side region 6 months after irradiation; D-0,impedance ratio at basal region 1 week after irradiation; D-6,impedance ratioat basal region 6 months after irradiation.
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